家の無い少女たち
家のない少女たち 10代家出少女18人の壮絶な性と生(鈴木大介著・宝島社)
文字校正の訂正時、絶対に「読まない」ことを心がけてきましたが、この本は読んでしまいました。7校やったので、最後の方はスルーできるかと思いましたが、7回とも読んじゃいました……。作業員としてあるまじき心がけですorz。
「読んではいけない、見るのだ」っていうのは、よく言われることです。「読んで」しまうと、誤字脱字などを脳内補完してしまって、見落とすからというのが理由ですが、普段は綺麗に並べることだけに専念している文字列が文章として頭に勝手に入ってくるような感じでした。
本文は、フォントワークス・マティスPlus-M、14Qベタ・行送り24Q、41字*16行。まあ、amazonのなか身!を見たまんまですが……。
そんなことはどうでもいいんですが、大雑把な言い回しをすれば、凄絶なことが、これでもかってくらい詰め込まれてるんですが、それが、寒いくらいタンタンと(©佐内正史)した口調で語られているのですよ。
AAでお馴染みの、「家族が増えるよ。やったねたえちゃん!」の世界は、フィクションとしても、かなり陰鬱なものですが、あの手の世界が、すぐ身近に実在することを思い知らされる本です。
ただ、よくあった援交もののように、高みの見物を決め込むわけでもなく、少女と同じ目線に立ってとかいった見下し感もなく、嗤うでもなく、泣くでもなく、まさしく「タンタンと」、特別な世界ではない、いつも暮らしている日常のすぐ隣にある、ありきたりな凄絶な話が11編。
海老原哲也さんデザインのカバーを見ただけで、なんとなく泣けてくるようになります。
何となく泣けてくるのは、「だからといって、何ができるわけでもない」に泣けてくるわけです。
普通に生きていくには、全然知る必要の無い世界の出来事ですが、すれ違うくらいすぐそこに、確かに存在している世界なわけです。
本文は丁寧に並べましたから、読みやすいです。タンタンとした語り口にあわせて、タンタンと並べたつもりです。著者のタンタンとした、重いメッセージが伝われば幸いです。
去年の仕事です。発売前後に書けばいいんですが、良かったんで、書いては直しを繰り返してるうちに、だらだらと……。まぁ、俺の読書感想文なんかこんなもんだろ。って見切りをつけましたw。